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2025.10.01
【2025年12月施行】令和7年度税制改正が変える源泉徴収事務!基礎控除・給与所得控除・特定親族特別控除の注意点

法改正

【2025年12月施行】令和7年度税制改正が変える源泉徴収事務!基礎控除・給与所得控除・特定親族特別控除の注意点

毎年、企業の人事労務ご担当者様にとって大きなイベントとなる年末調整。
令和7年度税制改正により、所得税の「基礎控除」や「給与所得控除」に関する見直し、そして新たな「特定親族特別控除」の創設が決定しました。
これらの改正は、原則として令和7年12月1日に施行され、令和7年分以後の所得税について適用されます。
このため、令和7年12月に行う年末調整など、12月以後の源泉徴収事務には変更が生じます(令和7年11月までの事務に変更はありません)。
本記事では、この改正が貴社の源泉徴収事務に具体的にどのような影響を及ぼすのか、特に年末調整における申告書の確認や計算方法の変更について、社労士事務所の視点から重要ポイントをわかりやすく解説いたします。
12月の年末調整に向けて、ぜひご準備ください。

1. 改正の概要:施行日と見直しの全体像

令和7年度税制改正による所得税の見直しは、原則として令和7年12月1日に施行され、令和7年分以後の所得税に適用されます。
具体的な改正内容は以下の4点です。

1. 基礎控除の見直し
2. 給与所得控除の見直し
3. 特定親族特別控除の創設
4. 扶養親族等の所得要件の改正

なお、令和7年11月までの給与及び公的年金等の源泉徴収事務には変更は生じません。

2. 実務の重要ポイント①:基礎控除と給与所得控除の変更

基礎控除額の見直し
基礎控除額は、合計所得金額に応じて改正されました。特に合計所得金額が655万円以下の場合、控除額が改正前(48万円)から大幅に引き上げられます。
この改正に伴い、令和8年分以後の「源泉徴収税額表」が改正されます。

給与所得控除の見直し
給与所得控除については、最低保障額が55万円から65万円に引き上げられました。これにより、給与の収入金額が162万5,000円以下の場合の給与所得控除額が65万円となります。
この改正に伴い、令和7年分以後の「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」が改正されています。

3. 実務の重要ポイント②:特定親族特別控除の創設

新たに「特定親族特別控除」が創設されました。

• 特定親族とは:居住者と生計を一にする年齢19歳以上23歳未満の親族(配偶者や専従者を除く)で、合計所得金額が58万円超123万円以下の人を指します。

• 控除額:特定親族の合計所得金額に応じて控除額が設定され、最高で63万円(合計所得金額58万円超85万円以下の場合)が控除されます。

• 申告:年末調整においてこの控除の適用を受けるためには、従業員から「給与所得者の特定親族特別控除申告書」を給与の支払者に提出してもらう必要があります。

• 注意点:この親族の合計所得金額が58万円以下の場合は、特定親族特別控除の対象とはなりませんが、従来の扶養控除(特定扶養親族として63万円)の対象となります。

4. 令和7年12月 年末調整における具体的な事務対応

令和7年12月に行う年末調整では、改正後の基礎控除額や給与所得控除額等に基づいて1年間の税額を計算し、既に源泉徴収した税額との精算を行います。以下の点に特に注意が必要です。

申告書の受理と確認
1. 扶養控除等(異動)申告書の確認 給与所得控除額及び扶養親族等の所得要件の改正に伴い、新たに扶養控除等の対象となる親族等を有することとなった従業員からは、「令和7年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出を受ける必要があります。

◦ ポイント: 扶養親族や同一生計配偶者の所得要件が「48万円以下」から「58万円以下」に引き上げられています。この改正により、要件を満たすこととなった親族がいないか、従業員へ周知してください。

2. 特定親族特別控除申告書の受理 特定親族特別控除の適用を受けようとする従業員からは、「給与所得者の特定親族特別控除申告書」の提出を受けてください。
◦ 様式情報: この申告書は「給与所得者の基礎控除申告書」「配偶者控除等申告書」などとの兼用様式が予定されています。

3. 基礎控除申告書、配偶者控除等申告書の確認 従業員から提出された「基礎控除申告書」や「配偶者控除等申告書」について、改正後の基礎控除額や給与所得控除額を適用して算出された合計所得金額に基づき、控除額が正しく記載されているか確認してください。

年末調整の計算
年末調整の計算を行う際は、以下の改正後の内容を適用します。

• 改正後の「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」を使用する。

• 改正後の基礎控除額を控除する。

• 創設された特定親族特別控除額(申告書に基づき)を控除する。

5. 令和8年分以後の給与の源泉徴収事務における変更点

令和8年1月1日以後に支払うべき給与については、源泉徴収事務がさらに変更となります。

扶養控除等申告書の記載事項の変更
令和8年分以後の「扶養控除等申告書」には、「控除対象扶養親族」に代わり「源泉控除対象親族」を記載することとされました。

• 源泉控除対象親族とは:従来の控除対象扶養親族に加え、合計所得金額が58万円超100万円以下の特定親族(19歳以上23歳未満)を含む親族です。

源泉徴収税額表の改正
令和8年分以後の源泉徴収事務においては、基礎控除や給与所得控除の改正に伴い、改正後の「令和8年分 源泉徴収税額表」を使用して源泉徴収税額を求める必要があります。

• 留意事項: 令和8年分以後では、特定親族特別控除が、親族の合計所得金額が58万円超100万円以下である場合に、各月の源泉徴収の際に適用されることとされています。源泉徴収税額表の計算もこれに対応します。


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まとめ
令和7年度税制改正は、従業員様の税負担だけでなく、企業の年末調整事務や源泉徴収事務に大きな影響を与えます。特に令和7年12月の年末調整では、新しい控除制度(特定親族特別控除)の適用や、改正後の控除額に基づいた計算が必要となります。
各種申告書の様式変更や源泉徴収税額表の改正も予定されており、実務ご担当者様は最新の情報を確認し、準備を進めることが不可欠です。

(注)国税庁は、給与支払者向け所得税の基礎控除の見直し等に関するコールセンターを令和7年9月16日に開設しています。詳細な情報や様式については、国税庁ホームページ(随時最新情報に更新)をご確認ください。
https://www.nta.go.jp/users/gensen/2025kiso/index.htm

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